ガイドブック表紙の解説
源氏物語絵鑑帖23巻 初音
六条院完成後の最初の春がめぐってきました。元日の夕べ、源氏は女性達のところを一回りします。絵は明石姫君の部屋です。
実の母である明石の君から「けふ鴬の初音聞かせよ」という歌が届いており、それをあわれに思った源氏は、姫君に直々に返歌を書かせるのでした。
続いて花散里・玉鬘と回った源氏は、最後に明石の君のところへ行きます。どうしたことか本人の姿は見えず、無造作に手紙が置いてありました。それは明石姫君からの返歌に感激してしたためたもののようです。
ここにある「岡辺」に注目して下さい。源氏物語における「岡辺」は、すべて明石にあった明石の君の邸をさしているからです。そこはかつて源氏が明石の君を愛した場所でした。
源氏が今栄華の絶頂にあるのは、かつて須磨・明石に流謫したことによるのです。「岡辺」によって明石の記憶を蘇らせた源氏は、その晩明石の君と一夜を共にします。これは大変なできごとでした。
六条院の女主人として、最初の元日の夜を源氏と過ごすはずだった紫の上がないがしろにされたからです。初音は鴬の初音であるだけでなく、「初寝」も響いているのでしょう。
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